名演『Crossroads』が収録された<Wheels Of Fire>は、1968年にいわゆるLP2枚組として全世界で発売されたが、日本では当初なぜか1枚ずつバラで発売されたそうだ。しかも1枚目(スタジオ)は銀色のピカピカ、2枚目(ライブ)は金色のピカピカのジャケで。
20年ほど前になるが、たしか横浜のディスクユニオンかなんかで、その金ピカ・ジャケのライブ盤が中古で売りに出されているのを一度だけ目撃したことがある。かなり魅力的だったが、自分はジャケ・コレクターではなかったし、中身は全く一緒ということもあって、買わずじまいで終わった。できることなら、もう一度手にとってじっくり眺めてみたいものだ。
その幻の金ピカ・ジャケの1曲目を飾る『Crossroads』はやっぱりピカイチだ。特に後半の高音域でのソロはすさまじく、ジャック・ブルースの逸脱したベースにハラハラさせられながらもケツがビシッと決まる瞬間は、いつ聴いても感服させられる。
冒頭であえて「名曲」ではなく「名演」としたのは、この曲のことを思う時、スイング・ジャーナルあたりで読んだ「ジャズに名演あっても名曲なし」というフレーズを思い出すからだ。クリームはジャズではないが、『Crossroads』の本質をうまく表している言葉だと思う。
ロバート・ジョンソンの優れた原曲のことはさておき、このトラックをクラプトンの「名曲」として括ってしまうと、何か大事なものがこぼれ落ちてしまう気がする。やはりこのトラックに関しては「名演」とすることで、一期一会的な解釈の余地を残しておくのが良いように思う。

■収録アルバム:< Wheels Of Fire ( クリームの素晴らしき世界 ) >