アルバムを評価するときの個人的な指標のひとつとして、アルバム・タイトルの付け方、というのがある。収録曲目の曲名、特にヒット曲などとダブっていないオリジナルなアルバム・タイトルは、アルバム全体に対する関係者の思い入れが感じられるし、どの曲も対等な感じがする。
逆に1曲目のヒット・チューンと同名タイトルだったりすると、なんだかインスタントな感じがして、残りの曲が全部オマケっぽく思えてきたりする。
たとえばディープ・パープルだと、前者は<Machine Head>、後者は<BURN>といったところか。
では、クラプトンの<Another Ticket>はどうだろう。5年ほど続いた初代His Bandを解散し、新メンバーとなって一発目のスタジオ録音にしてポリドール最後のアルバム<Another Ticket>はいろんな意味で異色で、前作とも次回作ともつながりがない。
そしてタイトルだが、アルバムタイトルと同名曲を収録しているというのは、実はクラプトン初なのである(ワーナー移籍後はチラホラでてくる)。
ヤードバーズの<For Your Love>はベックの曲もブレンドされた編集盤だし、いわゆる<いとしのレイラ>は正式には<Layla And Other Assorted Love Songs>というコンセプチュアルな原題だ。
まあ特に意図したわけでもなく、クラプトン自らが、自身の“これまで”と“これから”を語ったような歌詞の『Another Ticket』がアルバムのコンセプトと合致した、ということなのだろうが、これまでの魅力的なタイトルでのアルバム・オリエンテッド路線を思うと、気になるといえば気になる。
肝心の曲の方は、一見地味だが、ギターソロをとらず、ボーカルのリフレインだけでじわじわと盛り上げていくテクニックは素晴らしく、ボーカリストとしての自信を感じさせる仕上がりになっている。
というわけで自分としては、アルバム、タイトル曲ともに◎、というオチでした。

■収録アルバム< Another Ticket ( アナザー・チケット ) >