2005年6月3日の朝日新聞の一面記事下の書籍広告には驚いた。
レッド・ツェッペリン、クリーム、ビートルズなどといったワードが踊る「大人のロック!」という雑誌増刊の広告が出ていたからだ。
まあ団塊の世代(自分たちよりひとまわり上の世代だ)を当て込んだマーケティング戦略ミエミエな雑誌であるとはいえ、朝日の一面、天声人語の直下にクリーム、ツェッペリンというのはやはり感慨深いものがある。
何しろ天声人語といえば、自分が高校生だった1970年代後期でさえ「文章力をつけたければ毎日天声人語を書き写しなさい」などと学校の先生が本気で言っていたくらいで、いわばロックとは対極に位置しているカテゴリーだったのだ。
いつまでもロックなんかやってないで勉強しなさい、っていうような。
そんなロックのカリスマたちも、毒が抜けてノーマークとなったのか、はたまたマルクスや埴谷雄高などと同じくらい偉くなったのか?
1986年に発売された<August>は、前作に続いてのフィル・コリンズものだ。クラプトンについてみればこのアルバムから毒が抜け、同時にセレブの仲間入りだ。ティナ・ターナーとデュエットなんかしたりしてね。
でも『Holy Mother』はとってもいい曲だ。歌をレコードに合わせて口ずさみ、エンディングのソロも何度も繰り返し聴いた。カドカドしい堅さが削げ落ちたメロディアスにむせび泣くギターは、デレク時代に勝るとも劣らない名品だ。もうちょっと前面にギターを押し出したミックスにすれば良かったのに、と聴くたびに思う。

■収録アルバム< August ( オーガスト ) >