クラプトンがワーナーに移ってからは、ここぞというところでショボい編集盤をだしてジタバタしてきたポリドールだが、1988年の<Crossroads>だけは頑張った。いまでは珍しくないが、当時としてはまだまだ少なかった“レーベルを超えた選曲の実現”というやつだ。
デレク2枚目用ストックは誰にとっても目玉だが、他にも『Someone Like You』、『Heaven Is One Step Away』など積極的に探し求めはしないけど、いつかは買っておかないと・・・という軽いプレッシャーのかかる地味な名曲達をひとまとめにしてくれた功績も大きい。
そしてこの名ボックスのラストに、波乱に満ちた半生を振り返るかのように収録されているのが、新録音『After Midnight』(アフター・ミッドナイト’87)だ。
JJケイル原曲のこの曲のスタジオ録音はデラニー&ボニーたちと録音した1970年の<Eric Clapton>に収録されたのが最初だが、こちらは12人もの大編成で奏でる陽気なバージョンだ。徹夜で騒いで気づいたら朝、といった感じ。(<Crossroads>には70年バージョンのリミックス収録)
対して87年バージョンは、ギタートリオ+キーボードのほぼ最小編成。461オーシャン以降ずっとサイド・ギタリストを抱えてきたクラプトンだったが、フィル・コリンズに勇気づけられたのか、このころは昔のようにギター1本編成に戻っている。真夜中をかみしめて、ひっそりと演奏している感じだ。
抑制されたフレーズで、淡々としながらも徐々に盛り上げていくソロ・テクニックも70年バージョンでは聴かれない成長だろう。

■収録アルバム< Crossroads ( アンソロジー )>