クリームの大ヒット曲サンシャイン・ラブ、と聞くと頭の中でサンシャイン・オブ・マイ・ライフが鳴り出す人は多いと思うが、そっちはスティーヴィー・ワンダーの曲だ。
力強くポジティブな名曲である上にあちらの方が有名だからそれも仕方がないが、そのスティーヴィー・ワンダーのカバーがこの『I Ain't Gonna Stand For It』。原曲は『疑惑』という邦題がついていたようだ。
難解そうな歌詞とは裏腹に、ソウルフルでコンテンポラリーなメロディが場を盛り上げ、中間部の明るいコーラスは、まさにスティーヴィー・ワンダーといった感じだが、クラプトンらしい抑制のきいたボーカルの妙味で、暑苦しくないサウンドに仕上がった。
収録アルバムはジャケットも含めたレトロ感覚が人気のアルバム<Reptile>で、前作<Pilgrim>と同じメンツながらこちらはふくよかでアナログなサウンド。前作では目玉なはずのジョー・サンプルのピアノもさっぱり聞こえてこなかったが、今回はジョー・サンプルに加えてビリー・プレストンが随所でいい味をだしている。
そういえば最近固定メンバーになっているドラムの神様スティーブ・ガッドは、ジェフ・ベックとは既に70年代からコラボしていて、ジェフ・ベックといえば『迷信』や『哀しみの恋人達』などスティーヴィー・ワンダーにも昔かなりお世話になっている。
女性関係ではとうていクラプトンに太刀打ちできないベックなだけに、「いまさらガッドにスティーヴィーか、ププッ」などと自宅で陰口をたたいて憂さ晴らししたであろうことは、想像に難くない。

■収録アルバム< Reptile ( レプタイル )>