ロック世代にとって、『Over The Rainbow』と聞いて真っ先に連想するのは、かのリッチー・ブラックモア率いるレインボーがテーマ曲として、一時ライヴステージのオープニングを飾っていたことだろう。
トラディッショナルなこの曲をアームギンギンのハードロックで演るのがメチャクチャ格好良くてしびれた。続けて始まる『キル・ザ・キング』がまた凄くてね。
ところでライヴ・アルバムというのは、「会場に来れなかったファンの皆様にもご家庭でステージの興奮を」という趣旨でできたものだろう。昔は一般家庭にビデオ・デッキなんかなかったから、ライヴ・レコードを一生懸命聴いてステージの様子をあれこれ空想して楽しんだものだ。
だからディープ・パープルのステージを発掘映像で見たときにはショックだった。噂では聞いていたが、『スペース・トラッキン』のギターソロが、足で踏んづけたり床に叩きつけたり、アンプにゴリゴリ擦ったりして出した音だったからだ。こんなのを映像なしで音だけ何度も聴いてたのかよ!
脱線したが、2002年に発売されたライヴ・アルバム<One More Car, One More Rider>のラストに収められたクラプトンの『Over The Rainbow』は、引退が噂されていた時期だったこともあり、これで最後、といった雰囲気が漂う佳作だ。音楽活動のシメの曲、みたいな。
とはいえ、レインボーのバージョンが既存の価値観を破壊しようというロックの気概に満ちていたのに対して、クラプトンのサマになりすぎた当たり前のアレンジは、どうしても物足りなさが先に立つ。
いまだに進化が止まないギターの腕前という点で、なんとか“ベスト・オブ・フランクシナトラ”にはならずに済んでいるのだが。

■収録アルバム< One More Car, One More Rider ( ワン・モア・カー、ワン・モア・ライダー〜ベスト・ライヴ )>