全く楽器が弾けそうもないヤツが、何かのはずみで公衆の面前で楽器を弾かなければならない羽目になる。知り合いはみんなハラハラするが、本人は実は楽器の名手であった・・・。というのはハリウッド映画によくありがちな筋だ。たとえばジェラール・ドパルデューの『グリーン・カード』とか。
そしてもうひとつ、カッコいいシチュエーションというのは、弾けるのに弾かない、という選択だ。
クラプトンは、ヤードバーズを辞めてから自分のバンドでは、ほぼロックン・ロールを弾かなくなった。では弾けなくなったのかというと、そうではない。
弾けないどころか、メチャクチャかっこいいのである。
それが聴けるのが、このプラスティック・オノ・バンドのライブだ。この催しのジョンとヨーコのステージにはクラプトンは臨時のギタリストとして全曲参加していて、どの曲もいかしたソロを聴かせてくれる。
特に『Money〔That's What I Want〕』はビートルズもストーンズも取り上げているだけに、興味もひとしおだ。
ワンコーラスまわしてあっけなく終わるのは多少物足りないが、“あのクリームの”クラプトンがふらりと現れてロックン・ロールを弾きまくるのは爽快だしカッコよすぎる。これでモテないわけがない。
塩ビ時代のB面のヨーコ・オノに恐れおののいて敬遠していた諸君にもイチオシの名盤だ。

■収録アルバム< Live Peace In Toronto 1969 ( 平和の祈りを込めて )>