音楽は世界の共通言語、というのは声高に叫びたくなる気持ちのいい考え方だが、歌詞のあるものに関しては、ちょっとトーンダウンしてしまうときがある。
例えばゼップのもろもろの曲について、英語の歌詞がネイティブで理解できる人々と、そうではない言語圏の人々とで、感動のしかたに違いはないのだろうか、という疑問がいつも生じるからだ。
ロバート・プラントの歌詞なんて、メチャクチャな言葉の羅列なんだから、気にせず楽しもうぜっ、といってしまえばそれまでなんだが、80年代半ばにスザンヌ・ヴェガの『ルカ』という歌が流行って、最初聴いたときは一人暮らしの若い女性がお金はないけどマイペースで生活を楽しんでる、といった内容の歌詞だと思っていたら、実は幼児虐待のメッセージソングだった、というショックな出来事があってから、なおさら気にかかるようになってしまった。
そんななかで、スコセッシの映画は、こうした悩みを吹き飛ばす、まさに世界の共通言語として実に上手く音楽を活用していると思う。
そのひとつが『グッドフェローズ』のエンディングに流れるデレク・アンド・ドミノスの『Layla』だ。ここで使われているのはハ長調のピアノではじまるエンディング・パートだけ。緊張感あふれる映画の本編が終わったところで、この『Layla』のピアノ・エンディングにつながるという構成だ。
つまり、映画本編が『Layla』の前半の張りつめたクラプトンの歌のパートに当たる、と考えると、『グッドフェローズ』まるごと1本で『Layla』の感動体験を再現している、ととらえることも可能と思われる。
言葉では上手く言い表せないものの、レイラが好きな人ほど、この演出に「うん、わかる、わかる」と膝を叩いたのではないだろうか。

■収録アルバム< Layla & Other Assorted Love Songs ( いとしのレイラ )>