前回の『I Looked Away』と同様に、アルバムのキー・チューンではないけれど、華のあるオープニングを演出している佳品がこれ。
たしかサザンの桑田さんもプッシュしていたと思うが、この曲が好きな人は結構多いんじゃないだろうか。
盤に針を下ろした瞬間、っていうかCDのプレイボタンを押した瞬間、まったりと流れるブルージーなイントロは、もうこれ以上ないくらい枯れた大人の味わい。
抑えたボーカルに続く中間のギターはもう、よれよれで、ミストーンまでしっかり聞こえてきそうなノンエフェクトのクリアなトーン。気づかないうちにふと消え入りそうなくらいだ。
それがまたよくてね。意地をはって弾かないんじゃなくて、弾く必要がないから弾かないんだよ、って感じの余裕がなんともいえずカッコいい。
力があることを他人に見せる必要がない、というのは演奏技術におけるひとつの到達点だ。誰もが憧れるが、容易なことではそこにたどり着けないこともまた、我々は彼から学んだことになる。
コアなファン以外にはノーマークだった<Another Ticket>だが、そんな意味でも、完成されたレアなギターの“息づかい”が聞こえるアルバムとして、再度オススメしておきたい。

■収録アルバム< Another Ticket ( アナザー・チケット ) >