クリームには、これさえ買えば<グッバイ・クリーム>のライヴ『政治家』以外のすべてのオフィシャル録音が揃う、という大変便利でおトクな4枚組ボックス<ゾーズ・ワー・ザ・デイズ>がある(厳密には最近公式発売されたBBCセッションも買い足す必要があるが)。
塩ビ盤を処分したあと、CDでそろえ直すのが面倒なので、渡りに船とばかりにこのボックスで済ませていた。
そのボックスで久しぶりにライヴ『I'm So Glad』を聴いたとき、あれれ、こんな曲だったかなあという違和感を覚えた。頭の中のイメージだとエリックとジャック・ブルースの壮絶なバトルがある荒々しいテイクだったはずだが、流れてくるのはエリックの流暢なソロをセンターにフィーチャーしたスマートなサウンドだ。
まあ、曲順がシャッフルされているからそのせいだろう、とやり過ごしてしまい、どちらかというとヌケている『政治家』が気になっていた。
結局『政治家』が買え買え、としつこいのでついにバラで<グッバイ・クリーム>を買うことになったのだが、1曲目のオリジナルミックス版『I'm So Glad』を聴いてびっくり。
なんと、あのバトルはやはり実在したのだ。左チャンネルのエリックと対等の音量で右チャンネルからジャック・ブルースのベース。センターにジンジャー。
ギターをも超えるボリュームでブルースのベースが高音域でガンガンに歌っているときには、エリックはフレーズをコードリフに変えて配慮している様も、こちらのオリジナルミックスではリアルに聴き取れる。ボックスの新ミックスとはまるで別の曲みたいだ。
さらにやっかいなことにボックスの方には、冒頭に「スキップ・ジェイムスの曲をやります」というジャックのコメントがオマケで追加されている。
ボックスのライヴは全曲が新ミックスということは知っていたが、ここまで違いがあるならバラでもそろえなくちゃイケないかなあ。
という心理を見越してボックスからライヴ『政治家』を抜かしたのだとすれば、相手は相当の手練れである。

■収録アルバム:< Goodbye ( グッバイ・クリーム ) >< Those Were The Days ( ゾーズ・ワー・ザ・デイズ ) >