今から25年以上も昔になるが、渋谷のタワーレコードに初めていったときに感動したことがある。
輸入盤自体は珍しいものではなかったし、大手レコードチェーンでもちゃっかりブートレッグを売っていたりした時代だったのだが、では何に感動したかというと、アーティストを識別するインデックスタグの記入の仕方である。
例えばエリック・クラプトンなら、Clapton, Ericとファミリーネームが先に表記されたタグで、アルファベット順に並んでいたのだ。ジョージ・ハリスンだとHarrison, GeorgeとなっていてHのコーナーになるわけだ。
慣れるまでお目当てのアーティストコーナーにたどり着くのが大変だったが、まるで自分がアメリカのショップで買い物をしている国際人になったかのような錯覚に陥り、非常に気持ちが高揚したものだ。
その後、輸入盤メガストアブームが到来して競争が激化し、ユーザークレームがあったのかどうか今のような日本人にわかりやすいファーストネームが先の表記に変わってしまったが、その分カッコ良さもなくなってしまった気がする。ブランドイメージという意味では顧客志向が必ずしも良い結果を生むわけではないことの見本のようでもある。
それともうひとつ、ドメスティック・ショップでは間違いなくクラプトンコーナーに混ぜてあるDerek & The DominosやBlind Faithなど過去のグループもしっかり独立したコーナーが立ててあることにも感服した。アーティストに対するショップのリスペクトが感じられたからだと思う。
時は流れ、今でもがんばって存続しているそのたった1枚か2枚の淋しいコーナーをチェックするたび、ボビー・ホイットロックの単独クレジットで、歌とギターもボビーが演っている静かな『庭の木』が頭の中で流れだして、ドナドナした気持ちになるのである。

■収録アルバム< Layla & Other Assorted Love Songs ( いとしのレイラ )>