ぼくの場合、ポータビリティを最優先に考えた結果、iPod shuffleを選んだ。その選択は今でも正しかったと思う。しかしながら容量が少ないのはともかく、液晶画面がないのはやはりイタかった。
ダウンロードが５０曲を超えると、聴きたい曲を探し出すのに一苦労する。電車の中で、上着の中に手を突っ込んで胸のあたりでスキップボタンをモコモコ５０回近く押していると、まるで自分自身にチカンしているアブナイ人みたいだ。
といったわけでアルバムを４〜５枚ずつぐらいを入れ替えて聴いているわけだが、それが恐ろしくメンドウというのが前回の話。この度ようやく中身を入れ替えた。
『Smile』は、あのチャップリンが自ら作曲に関わったといわれる、映画『モダン・タイムス』で使用された曲。ドラマの主題歌としてエルビス・コステロのバージョンがピックアップされたのは記憶に新しいが、漫然と映画やＣＭを見てるだけでも年に何回かは挿入曲やテーマ曲としてさまざまなアーティストのカヴァーに出会う超スタンダードなナンバーだ。iTMSのパワー・サーチで"Smile"で検索するとイヤになるほどカヴァーが発掘できるので、ヒマな人はやってみよう。
さてエリックの『Smile』だが、アルバムでは７曲目になっているが実際には７４年のツアーのオープニング。ウォーミングアップの意味もあったのだろうが、「さあ、ジョージの出番だよ！」の掛け声で、ハイライトのソロをジョージ・テリーに譲っているのは、His Bandと名乗ってはいても本来は個人名義のツアーであることを考えれば、度量というよりはある種のニヒリズムさえ感じさせる。
こういったミディアム・テンポのバラードは、９０年代のエリックの大ヒット曲に通じるところもあり、本来ならもっと大勢のファンに認知されるべきナンバーなのだが、アルバムタイトル＜Time Pieces 2＞を意識しすぎた"ストラトを抱えたエリックが懐中時計を見ている"というもの凄いイラストのダメジャケが災いしてか、大きくスポットを浴びることもないまま初出から２０年以上が経過してしまった。
すぐにマーケットから姿を消すことはないと思うが、気になる御仁は今のうちに押さえておいた方がいいかもしれない。

■収録アルバム＜ Time Pieces 2 （ エリック・クラプトン・ベスト・ライヴ ）＞