「初期YMO曲すべてを作詞」のキャッチフレーズで知られるクリス・モスデルと、坂本龍一、そしてマイケル・ジャクソン。この3人のクレジットから、エリック・クラプトンを連想した人が、いったい何人いただろうか。アルバム<オーガスト>が発売されるまでは。
まあ、クラプトンがSMAPに曲を提供しちゃう21世紀という時代だから、今となってはなんてことない話だが、当時としてはクラプトンがYMOナンバー『ビハインド・ザ・マスク』をカヴァーっていうのは結構びっくりしたものだ。
とはいってもクレジットから受ける印象ほど、サウンドとしてアルバムの中で浮いているという感じはない。前作からのシンセ路線に慣れちゃったこともあるし、時代のサウンドだったということか。コンピュータ音声とギターの掛け合いの部分が"ロック対テクノ異種格闘技戦"と見ることもできるが、まあそれは考えすぎだろう。
ちなみにアナログ盤ではこの曲がラストを飾りそれなりに整合性がとれていたのだが、同時発売のCDでは『グランド・イリュージョン』が追加収録されてラストとなっている。このアルバムからメインの音源がCDに切り替わったということで、むしろアナログ盤が1曲削られた、と見るべきなのだろうが、平板で長いだけの退屈な曲なのでボーナス・トラック的なイメージの方が強い。
さて、クレジットにマイケル・ジャクソンが入っているのは、マイケルがアルバム<スリラー>用にカヴァーしようとして歌詞を一部書き替え、そちらのバージョンをクラプトンが採用したから、ということらしい。
結局<スリラー>には入らなかったが、例えばSirポール・マッカートニーとのデュエット『ガール・イズ・マイン』の代わりにクラプトンとデュエットで『ビハインド・ザ・マスク』が入っていたらと想像してみると結構おもしろい。なにしろ<スリラー>は、現在までの通算で世界一売れた、ともいわれている怪物アルバムなわけだから。
もちろんプロモ・ビデオはクラプトンが恥じらいながらもマイケルと頬をすりあわせて営業スマイルを振りまくシーンが必須。

■収録アルバム< August ( オーガスト ) >