1989年の日本の音楽シーンといえば、MTVが主役となっての洋楽ブームも下火となり、同時にアイドル&ニューミュージックのツートップ体制にも疲弊が顕著となって、Jポップと呼ばれる、やがて洋楽を押しのけて90年代のヒットチャートを席巻する新勢力がチャートに顔を出し始めた頃だ。
Jポップというのは前年に開局したJ-WAVEというバブル真っ盛りの国際都市トーキョー向けのFMラジオ局にルーツを持つネーミングで、その響きの良さと意味の通りやすさがウケて、その後われもわれもと頭に"J"をつけだした。J文学というのもスゴかったが、スカッとはまったのはJリーグだろう。
ちょうど89年からは日本も"平成"時代に突入したこともあって、"J"がつくとインターナショナルで開かれた新生ジャパン、という良いイメージを受けたものだが、最近ではグローバルが当たり前になってしまって、逆に矮小化されたナショナリズムが漂ってくる。
そんな平成元年の日本に届けられたアルバム<ジャーニーマン>からのファーストシングルがこの『バッド・ラブ』だ。「レイラとバッジみたいな曲を」というワーナーの要請に応じてプロダクトされた曲ということで、サビメロのイントロ→転調して歌→アルペジオのブリッジ→ソロ→サビという展開は、たしかにレイラとバッジを足して2で割った、という表現がぴったり。どうせならアルバム・バージョンにはインストのエンディングテーマをつけて、ラストの『Before You Accuse Me』の前に持ってきて欲しかった。
というのは冗談で、ぼくとしてはどちらかというとこの曲の歌メロに『レット・イット・レイン』と同質の安易さと未熟さを感じてしまい、もうちょっと何とかならんか、とヤキモキしたりするわけだ。とはいっても聴いているとついついノッてしまうのは確かだし、<24nights>収録のライヴ・バージョンもカッコいいので、まあいいか。
ちなみに<ジャーニーマン>というのは「いっぱしの職人」という意味だそうで、「旅する人(journeyer)」ではないらしい。半端な英語力が弊害となるよい例のひとつだ。

■収録アルバム< Journeyman ( ジャーニー・マン ) >