中小小売業者を保護する目的で運用されてきたいわゆる「大店法」の規制緩和により、人々は個性はないが品揃えが豊富で価格の安いメガストアで買い物をするのが普通になった。
その影響でか、個人商店をメインとする私鉄沿線の駅前商店街が一気にさびれてしまった。
特にレコード(CD)屋の衰退ぶりは目を覆わんばかりだ。入り口のガラスに期待を込めて「宇多田ヒカル・ニューアルバム予約受付中!」などと貼ってあるスキマからガラガラの店内をのぞいてみると、ドナドナした哀愁でいっぱいになる。
そんな店内のクラプトン・コーナーは概ね次のような感じだろう。
売れたあとの補充がないスカスカの洋楽コーナーに、斜めに傾いて<461オーシャン>の旧仕様盤、<バックホーム><いとしのレイラ><ベスト・オブ>、ついでになぜか<ライブ・クリームVol2>があり、お隣からエリック・カルメンが1枚紛れている。
そしてもう一枚、きっと在庫しているのが、もともとグリーンの帯からイエローが退色して水色になってしまったオリジナル・サウンドトラック<ラッシュ>だ。
同じ「全編クラプトン!」のサウンドトラックでもミッキー・ロークの<ホームボーイ>が完全に廃盤となってしまったのに<ラッシュ>がなぜ現役かは、スーパーヒット『ティアーズ・イン・ヘヴン』がオリジナル収録されたアルバム、という簡単な理由だが、このサントラには実は他にも聴くべき曲はあるのである。
『ティアーズ〜』と対をなす歌モノ『ヘルプ・ミー・アップ』でのクラプトンのギターは、まるで70年代に里帰りしたかのようなナチュラルなトーンで、自然と『オール・アワ・パスト・タイムズ』あたりを思い出す。
リズム隊をグレッグ、ネイザン、スティーブ・フェローンといったコンテンポラリーな面々でコッチリ固めているため、レイドバックしきれていないもどかしさは多少残るが、長めのエンディングでユルユルなフレーズを弾き流しているのも昔っぽくてグッド。
嵐のような90年代にあってポッカリと空いたエアポケットのような1曲だ。
※グリーン帯の<ラッシュ>はForeverMusicシリーズでの再発廉価版(7/18追記)

■収録アルバム< Rush ( ラッシュ )>