ロバート・ジョンソンのカヴァー集<ミー&Mr.ジョンソン>のラストを飾る曲。
『ヘル・ハウンド・オン・マイ・トレイル』などと安易に原題をカタカナにリプレイスしただけのタイトルだが、もともとのロバート・ジョンソン盤では『地獄の猟犬がつきまとう』という、もの凄く恐ろしい邦題だった。
真っ暗なうえになにやらモヤモヤしたものが込み上げ、手元にあったら思わず聴いてみずにはいられない強烈な邦題だ。
ほぼ直訳に近い意訳だが、原題のニュアンスがよりよく伝わるような場合は、このような日本語化はどんどんするべきではないかと思う。
かつて洋楽を日本国内で大々的にプロモーションしようとした時期、バンドのイメージだけで曲の内容とは関係ないタイトルをつけたり、日本人好みのステレオタイプな言い回しを多用した邦題が多く見られた。
そのあまりの露骨さに、一部誠実なファンからは当時からブーイングがあったし、アメリカ至上主義のムードと相まって、「邦題=ダサイ」という認識が定着していった。
その顕著な例はキッスの『地獄の〜』というシリーズだし、一連の『哀愁の〜』シリーズも多くの失笑を買った。
まあそんな経緯があってのことだろうが、音楽出版のスピードアップとコストダウンも兼ねた昨今の安易な原題そのまま、もやっぱりなんとかしたい。
『ヘル・ハウンド・オン・マイ・トレイル』では、英語圏に住んでいないぼくたちにとって曲を識別するための記号にしかならない。極端に言うと「14曲目」といっているのとほぼ変わらない気がする。
とはいいながらもクラプトン・バージョンで『心やさしい女のブルース』とこられるとちょっと退いてしまう。ここはやっぱり『カインド・ハーティッド・ウーマン』だろう。
要は、もうちょっと1曲1曲に愛着を持ってふさわしい邦題を決めて欲しい、ということだ。
音楽マーケットでは、タイトルは商品の一部であると同時に、曲を売り込むためのキャッチコピーでもあると考えれば、投資対効果を高める重要な作業として、ステークホルダーにもきちんと言い訳できるはずだ。

■収録アルバム< Me And Mr. Johnson ( ミー&Mr.ジョンソン )>