80年代後半のバブル経済の時は、証券や不動産で大もうけする人々が続出する一方、そんなものには手をださず、勤勉に働くのがいちばんよいのだ、といった空気はまだまだ残っていたし、事実、バブルが崩壊して時の長者たちが億単位の借金を抱えてしまったとき、ほらやっぱりね、といったネガティブな喜びにひたった人も少なくなかったろう。
そして昨今のマネーブーム。デイ・トレードで若者が億単位の金を稼いだ、といった出来事がもはやニュースにならなくなるほどの狂乱の中に我々は暮らしているわけだが、かつてのバブルと違うのは、マネーゲームに参加せず「勤勉に」働く、という選択が人生の安全な航路ではなくなってしまったことだ。
勤勉に働いていたって、いつ会社がなくなるかわからないし、老後に年金がもらえるかどうかもわからない、お金がなければ病院での治療も後回しにされるかもしれない。
そんな時代のなかで、自分の所属する会社や組織でいかように立ち居振る舞うか、というよりは標準的な生涯賃金である2億円をいかに稼ぐか、のほうに人々の人生設計の軸足がシフトしつつあるように思われる。
というわけで、目の前に儲かるチャンスがあるのを見過ごすことができない気持ちもわかるし、何もしないでいると不安になる気持ちにも共感できる。しかしながら何といってもイヤなのは、自分も周りの人間も、毎日がケチくさく、せわしないのである。
そんなガツガツした日々を反省するとき、40年間『ランブリン・オン・マイ・マインド』を演奏し続ける姿勢には頭が下がる。しかもこのCD+DVDに収められたテイクのように、今もって無邪気に完コピに励む様子は、まるでギターを始めたばかりの中学生のような初々しささえ感じさせる。
かような一途な道も、一部許された人だけのものではないはずだと、強く念じてやまない今日この頃だ。

■収録アルバム< Sessions For Robert J ( セッションズ・フォー・ロバート・J )>