自分がかつて所属していた有名バンドのヒット曲を、次のバンドに「お持ち帰り」という、ちゃっかりパターンは枚挙にいとまがない。
典型的なのはSirポール・マッカートニーが<ウイングス・オーヴァー・アメリカ>でビートルズ・ナンバーを披露したことだが、ウイングス絶頂期にビートルズ・ナンバーは不要、という辛口の意見も多いだろう。
ディープ・パープルもすごい。イアン・ギランは脱退後のファースト・ソロでいきなりパープルの名曲『チャイルド・イン・タイム』をアルバムタイトルにして曲も収録という反則技。かたやリッチーは『ミストリーテッド』をお持ち帰りで、しっかりレインボーのライヴのハイライトに。
ジミー・ペイジは、ヤードバーズの『幻惑されて』をツェッペリンに「お持ち帰り」した前科があるが、ヤードバーズ・バージョンはいわば発掘テイクに近いから推定無罪としよう。
そこでクラプトンの話になるわけだが、やはり代表格はクリームの『バッジ』だろう。
ソロ活動に入った当初はクリーム・ナンバーを封印していたようだが、ジョージとの共作だから「通し」と思ったのか、73年のレインボー・コンサートから現在まで、ソロ活動のほぼ全期間で演奏し続けている。
レイドバック期以降は、スタジオ盤のエンディングであるブレイクの後に必ずといっていいほどコーラスをフィーチャーしてのリプライズがあり、妙に長尺な仕上がりになっているのが鬱陶しく、このナンバーはやっぱクリームの3人でかっちりコンパクトにやるのが本当だろうと思ったりするわけだ。
そういうわけだから昨年のクリーム・リユニオンのCDの中で何がうれしいかといったら、オリジナル・メンバーでの『バッジ』のライヴ演奏が40年近く経ってついに実現した、ということにつきる。
残念ながらジョージをゲストに迎えて、というのは永遠に不可能になってしまったわけだから、今回のリユニオンをもって『バッジ』についてはとりあえず任務終了、として良いのではなかろうか。

■収録アルバム< Royal Albert Hall London May 2・3・5・6 2005 ( リユニオン・ライヴ05 )>