復帰後第1弾、全米ナンバー1、レゲエ、ボブ・マーリー・・・。おおかたこんなワードが連想される『アイ・ショット・ザ・シェリフ』だが、特に日本での人気の本質は、やはり楽曲そのものの良さ、ということに尽きるだろう。
振り返ってみるにエリックの取り上げる楽曲には、もろマイナー系、というのが非常に少ない。マイナーキーのナンバー自体はたくさんあるが、マイナー感を高める短3度を抜いてブルーノートを中心としたフレージングを展開することで、ウェットにならない分、日本人には多少物足りなさが残ったりもするわけだ。
なんせぼくらはゲイリー・ムーアの『パリの散歩道』が大好きなのだから。
というわけで、そんなエリックのナンバーのなかにあって、お堅いプログレファンも思わずカラダでリズムを刻んでしまいそうな軽快なノリと、押しつけがましくない程度に哀愁をおびたキャッチーなメロディラインをもつ『アイ・ショット・ザ・シェリフ』に人気が集まるのはモノの道理というところだろう。
また、思わせぶりなピアノのオブリガードで期待を持たせておきながら、あまりにもそっけなくフェード・アウトしてしまうスタジオ盤とはちがい、ライブ・ステージでは当時から哀愁のマイナー系フレーズをたっぷりと聴かせてくれるエンディングのギターソロを展開していて、まさにこれを待っていたよ!といったカタルシスが得られる展開となっているのがウレシイ(デラックス・エディションのオマケCDでも聴ける)。
ところでこの名曲は歌詞も強烈。「バケツは毎日、井戸の中。いつかバケツのそこが抜けるだろう」という4コーラス目のフレーズがすごすぎ。
毎日しいたげられた暮らしを強いられていると、人はいつか壊れてしまう、といった内容のメタファーなのだろうか?

■収録アルバム:< 461 Ocean Boulevard [Deluxe Edition] (461オーシャン・プールヴァード+16<デラックス・エディション>)>