エリック・クラプトンを初めて見たのは、思えば今からちょうど25年前の12月、日本武道館でのことだった。
当時はもちろんインターネットなんて便利なモノはなく、大学の仲間の中には電話をもっていない、というヤツも結構いたりした時代で、チケットを取るためには、発売日の前日からチケット売り場に徹夜で並ぶ、というのが通例だった。
そんなわけでぼくたちは、下宿のおばさんの取り次ぎ電話で待ち合わせの約束をして、発売前夜に新宿マイ・シティのプレイガイド前に陣取ったわけだ。
たしか夜9時ぐらいには到着したと思うのだが、その時間すでに大勢の人たちが並んでいて、毛布持参のカップルなんかがいちゃいちゃしていたりもしたから、男だけのぼくたちグループは妙に沈んだり嫉妬したりと複雑な気持ちになったりもした。
また、アコギ持参で並ぶアマチュアミュージシャンや、いかにも「クラプトン命」みたいなコスチュームのヤツを見ると、なぜか「あいつらとは違うぞ」みたいな反発を覚えたりもしたっけ。
最初は楽しいのだがすぐに飽きて、交替で近くの居酒屋にいったり歌舞伎町を一回りしてきたりするのだが、うるさかったアコギのにいちゃんたちも意外にあっさりと眠ってしまったりで、発売開始の10時までの長かったこと。
そうして手に入れた席はといえば、2階のはじっこ。昔も今も、ショウビズ業界はなんの公正さもない不透明度100%の世界なのだ。
その頃のクラプトンのライブのオープニングといえば、『タルサ・タイム』が定番。すでに一年前に発売されていた<ジャスト・ワン・ナイト>があっただけに、いまひとつ新鮮味には欠けたが、「ホンモノが目の前で」という圧倒的現実に完敗して、まあいいか、と次の曲をひたすら期待するのだった。

■収録アルバム< Just One Night ( ジャスト・ワン・ナイト ) >