限りあるアナログ盤というメディアだというのに、ジャックと比べての自作曲の少なさをカバーするかのように、いきなりデビュー・アルバムからドラム・ソロをねじ込むというジンジャーの荒技の間隙を縫うように、ひっそりと敬愛するロバート・ジョンソンのカバーを歌うエリック。
それが<フレッシュ・クリーム>で唯一、エリックがリード・ヴォーカルのナンバー、『フォー・アンティル・レイト』だ。
とはいっても、一節歌ったばかりだというのに、ジャックがコーラスとハーモニカで乱入してきて、エリックのヴォーカルをかき消さんばかりにブロウしまくるあたりは聴いていてヒヤヒヤするが、上手いこと寸止めしていると見ることもできそうだ。
というような、いつものキャラ設定を焼き直しただけのつまらない批評はやめて素直に聴いてみると、オーバーダブを極力抑えたシンプルな録音、クリアに突き刺さるジャックのハーモニカ、甘いトーンのエリックのヴォーカルにかぶさるジャックの3度上のコーラスなど、曲としてきれいにまとまっており、ギターソロはないものの、意外に味のあるタイトルであることがわかる。
ところで、ジャック・ブルースって、名前にブルースってつくくらいブルースが好きなのか、と思われがちだが、ジャックの方は「Bruce」、音楽ジャンルの方は「Blues」と全く違う言葉である。
大きなお世話であることは百も承知だが、非英語圏の住民としては知っておいて損はないネタでもあるだろう。

■収録アルバム:< Fresh Cream ( フレッシュ・クリーム ) >