この人が参加すると、ホントに歌にメリハリがついて明るくなるという見本のようにフィル・コリンズが元気なバック・ボーカルでバリバリに歌っているのが名曲カバーシリーズの『ノック・オン・ウッド』。
サビの頭で♪ノック〜の歌詞をエリックとずらしてキュートに決めてるあたりは、フィルのウィンクが目に浮かんでくるようで、ちょっと音域が高くてぜいぜいいいそうなエリックを差し置いてリード・ボーカルさながらの目立ちようだ。
あとこの曲で特筆すべきは前作までにはなかったシンセが全面に押し出されたアレンジとなっていて、ギタリストのアルバムとは思えないほどギターが地味にバックに引っ込んでいること。
透明感のあるシンセも気持ちいいが、時代のサウンドという範疇にきれいに収まっていて、ほぼ無意識的に聞き流される「歌のバック」に終始しているのは多少行き過ぎだったか。
いずれにしろ前作の『クロスカット・ソー』がギターを中心に据えた、楽器の木の香りが漂ってきそうなトラッドなサウンドだったことを思えば隔世の感がある。
「ありえねーっつーの!」と投げ出したオールド・ファンもさぞや大勢いたことだろう。
ここまで頑張ってナウくした<ビハインド・ザ・サン>も、結局ワーナーにボツをくらい、しぶしぶハリウッドへと向かうエリックだったが、そこで知り合ったネイザンやグレッグとはフィルより長い付き合いになるのだから、結果論とはいえやはり動物的嗅覚にすぐれたレコード会社の人というのはバカにならない。
※フィルとエリックのコラボの詳しい経緯についてはoceanさんのこちらの記事をご覧ください。(04/16追記)

■収録アルバム<ビハインド・ザ・サン>