自分がいつも女性と問題を起こす原因というのは、自分が父親を知らなかったことにある。強い女性を見ると全面的に頼ってしまい、やがてその女性が自分の問題を解決してくれるわけではないことに気づく、というパターンの繰り返しだった。
といったようなことを昔インタビューで述べていたように思う。
また、息子に対面したときに、父親としてどのように振る舞って良いのかわからず困惑し、男の子がちゃんと育つためには父の目が必要だ、との認識に至ったという発言もあったかと思う。
そうした思いが結実したのが『マイ・ファーザーズ・アイズ』である。
ほぼ10年前にリリースされたエリックのソロ活動の集大成的な<ジャーニー・マン>をもってめでたくアガリ、と誰もが思ったものだが、運命はそれを許さず、より深い苦悩のうちに過ごさねばならなかった90年代の締めくくりとして、ポピュラー音楽の必要要素としての歌詞ではなく、自分自身を客観的に掘り下げ、その結果を多くの自作曲にしっかりと反映するという作業を成功させた<ピルグリム>のオープニングを担うだけの力量を備えたこの名曲は、サイモン・クライミー時代のベスト・ワンととらえて間違いないだろう。
歌メロはもちろん、スライド・ギターによるテーマも素晴らしく、何度聴いてもワクワクする。イントロが始まったときの高揚感を約束するアイコンとしては、『コカイン』や『天国への扉』などと並ぶパワーを感じる。
キーボードに詳しくないので間違ったらご指摘願いたいのだが、冒頭のフレーズはジョー・サンプルのフェンダー・ローズだと思うが、せっかくのスペシャルな人選なのに、そこ以外に彼のピアノがほとんど聞こえてこないのが少し淋しい。
なお、今回のレビューに関して、訳詞は「イルカちゃんの楽しく英会話!!」を参照した。

■収録アルバム<Pilgrim>