ファースト・アルバムというものはすべて、そのアーティストなりグループなりの素晴らしさがマックスでアピールできるようあらゆる工夫と努力がなされ、満を持して世に出るものであるが、反対にラスト・アルバムというものは、予期せずして結果的にラスト・アルバムになってしまった、という場合がほとんどである。
売れていて問題を抱えていないバンドが、メンバー仲良く集まって、こんな素晴らしいラスト・アルバムを作ろうよ!と打ち合わせてレコーディングし、その後めでたく解散しました、という話はあまり聞いたことがないし、だからこそ個々の問題が片づいた後、もう一度やりなおそうじゃないか、という再結成というイベントが一般化するのだろう。
もちろん、我らがクリームも、そんなあまり幸福でない結末を向かえたバンドのひとつなわけだが、世の中に多大な影響を与えたバンドだっただけに、<グッバイ・クリーム>というそれらしきタイトルのアルバムで、ファンやステークホルダーを納得させる必要があったというわけだ。
そんなわけで6曲30分ちょっという金返せ的なスペックのアルバムではあるが、中身はすごいんです。
前半ライブ編のラストとなる『トップ・オブ・ザ・ワールド』は、68年の解散ツアーのライブからということだが、同じツアーからの<ライブ・クリーム2>の面々とは比べものにならないくらいのエクスタシーな演奏。イントロからの鋭角的フレーズにもぶっ飛ぶが、中盤ソロの淀みなくあふれ出るような高音域での泣きのフレーズの連発を前にしては、さしものジャック・ブルースも影が薄い。
このテイクに限っては、三つ巴のクライマックスのベースの音像をフェイダーでセンターに押し出してくるボックスセット<ゾーズ・ワー・ザ・デイズ>の新リミックスで、ようやくジャック・ブルースの存在に目がいった、といってもあながち誇張とばかりはいえないであろう。
ひとつ、初めて聴いたときから気になっていたのだが、中盤のギターソロが始まってすぐ、ワウペダルを一杯に踏み込んだみたいにシュワーッと音質がトレブルに変化するのは、あれは意図してのものだったのだろうか。

■収録アルバム<グッバイ・クリーム>