ロン・ウッドやロビー・ロバートソンのギター・ソロを、エリックが弾いていると勘違いしている気さくなファンを除けば、明らかにアルバム<ノー・リーズン・トゥ・クライ>でのエリックのハイライトはこの『ダブル・トラブル』だろう。
中間とエンディングでしっかりギター・ソロをフル・コーラス決めている曲というのは、ライヴを除けば復帰後はかなりレアな存在になってしまったわけだから。
ただフレーズに関しては、マイナー調の原曲を活かしたもったりとしたスケール展開は素晴らしいものの、速弾き部分になるとドミノス時代の焼き直し感が否めず、キレがない分だけ悪い意味でのレイドバックがイメージされてしまう。
ところでこの曲でのエリックのギターのトーンには、何となく他と違うな、と感じさせるものがある。手元の資料を見てみると、この曲はおそらくテレキャスターで演奏されている、とのことなので、たぶんそのせいだろう。
テレキャスターと言われて聴いてみると、いかにもあのタイトなボディと細いネックから叩き出されるソリッドなトーンに聞こえてくるから人間の耳はいい加減なものだ。
同様にして、ひとつ前のアルバム<安息の地を求めて>で、他とちょっと違う感じがする『メイク・イット・スルー・トゥデイ』は、やはりストラトではなくクリーム時代に多用していたES-335というギブソンのモデルを使っているそうで、こちらもそう聞くと妙に納得してしまう。
70年代エリックのシンボルが、サウンド、ビジュアルともにストラトキャスターだからといって、それに引っ張られすぎると思わぬ落とし穴が待っているから、耳に自信のない御仁は要注意だ。
※いただいたコメントの通り、メイク・イット〜のES-335はエクスプローラーの誤りのようです。2008/05/22追記

■収録アルバム<ノー・リーズン・トゥ・クライ>