今日ぼくらはgoogle先生のおかげで、業界の舞台裏的なことでさえほとんど何でも知ることができるようになった。しかも瞬時に、会社のデスクで仕事してるフリをしながら。
ぼくが高校生だった30年前は、もちろんそんな時代ではなかったし、その頃はスーパースターを映画の主人公のような超人だと思っていたので、ツェッペリンの映画『永遠の詩』(1976公開)を見たときも、あの冒頭のツアーに招集されるシーンも本当のことだとほぼ信じていた。
4人がバラバラにそれぞれの生活を楽しんでいるところに、いきなりツアーの知らせが届いて、「えっ、明日かよ!」というあのシーンだ。
それはまるで美女とバカンスを楽しむジェームズ・ボンドに新しい指令が届くように格好良くて、自家用機でニューヨークに飛ぶ様はまさに彼らは天の使いか!と感激したものだ。
ところがそのすぐあとにぼくらは映画『ラスト・ワルツ』(1978公開)で、ロックバンドのツアーの真実を知ることになる。ロビー・ロバートソンやメンバーが何度も疲れた、疲れたいう様子はリアリティにあふれ、ロックコンサートは生身の人間による過酷なビジネスに他ならないことに否応なく気づかされたわけだ。
そんなラスト・ワルツの中盤に、エリックはちょっとラリった感じで登場し、有名なストラップ外しのシーンになるわけだが、正直なエリックの表情を見ていると、あらかじめ仕込まれた演出ではないか、と感じてしまう。
曲の後半、エリックはヤードバーズ時代の『トゥー・マッチ・モンキー・ビジネス』を彷彿とさせる高音域でのハイテンションなフレーズを連続で繰り出し、ロビーに完全に白旗をあげさせるが、その時のロビーの目線の暖かさにこそ、二人の親交がリアルに伝わってくる。

■収録アルバム<ラスト・ワルツ>